世界各国の絨毯が集まるシンガポール

こんにちは。インテリアコーディネーターの原山です。
今回はシンガポールの絨毯事情についてレポートしたいと思います。

シンガポールはその立地から、アジアの物流のグローバルハブとして地位を確立しています。
中でも海運業は国を挙げて力を入れており、取り扱う貨物の9割がシンガポールを経由して他の国へ向かうトランスシップメントだそう。
シンガポールの海に行くと、沢山のコンテナーを積んだ船や、入港を待つタンカーが何隻も停泊している様子が見られ、海運業が盛んなことを実感する光景です。

このような背景もあり、貿易の中継地であるシンガポールには世界各国のラグや絨毯が集結しています。
ヨーロッパ、中東、インド、オーストラリアと日本ではあまり目にすることがない珍しいものも多いので、絨毯屋さんを見てまわるのはとても楽しいです。

有名な観光スポットのアラブストリートには、中東の絨毯屋さんが沢山あり、美しいペルシャ絨毯やキリム、ギャッベ等、様々な種類のカーペットを見ることができます。
中には日本語を話せるオーナーさんもいて、ペルシャ絨毯について詳しく教えてくださいました。

シンガポールアラブストリート

ペルシャ絨毯
ペルシャ絨毯とは、古代ペルシャから継承されている優れた美術工芸品で、現在もイランの主要な輸出品です。
その繊細で洗練されたデザインと美しい色合いが世界中で愛され、イスファハン、クム、ナイン等有名な産地の人気工房の物は、コレクターズアイテムとなり価格も高くなるそうです。
ペルシャ絨毯の模様は叙情的なペルシャ民族の生活や自然観、宗教観などが美しく物語のように描かれているそう。つくられる地域や部族によって図案も変わるようで、一枚一枚色も模様も異なり見ているだけでワクワクしてきます。
ペルシャ絨毯と言われるのは、この繊細で美しい模様を手織りで作り上げたもののみとされ、特にシルクで織られた物は艶がありその手触りにうっとりします。
ペルシャ絨毯は高価ゆえに模造品も多く出回っているそう。お店では本物の見極め方もしっかりとレクチャーしてくださいました。

キリム
キリムは、数千年にわたる歴史を持つペルシャの伝統的な平織りの織物で、イランをはじめ、トルコやアフガニスタン等中央アジアに住む遊牧民や農村地域でつくられてきたそうです。
デザインは、地域ごとの文化や風習、自然を表した模様と色使いが特徴。
各家庭や部族ごとに異なるデザインが存在しており、キリムはそれぞれの文化や歴史を織り上げた芸術的な工芸品です。
素材は、ウール、シルク、コットン、また、ヤギやラクダの毛でつくられたものもあるとのこと。
糸の染色は、草木染を中心に、昆虫、鉱物などから抽出された天然の染料も用いられナチュラルな風合いが特徴の絨毯です。
自然の色で染められたキリムは時間とともに色が美しく変化するのも魅力で、オールドリリムと呼ばれるヴィンテージ品も使い込まれて生まれる艶や風合いが味わい深いと人気を集めています。

ギャッベ
ギャッベとはペルシャ語で「ざっくりとした」という意味。イランの南西部のザクロス山脈一帯に住む遊牧民が織る毛足の長い素朴な風合いの絨毯のことをいいます。
山岳地帯で暮らす彼らが、暑さ寒さをしのぎ快適に暮らせるようつくられてきたギャッベは厚みがあり、その温かみのある踏み心地とナチュラルな風合いが魅力です。
また、織りの技術がユネスコの無形文化遺産に登録されたこともあり、その伝統的な価値に注目されています。
部族の女性たちが、周りにある美しい自然、そして自分自身の感情や夢を絨毯に込めて手織りしたギャッベは物語を持つアート作品のよう。
過酷な環境でも耐えられるつくりになっているため、耐久性が良く中には親子3代で100年使われるものもあるそうです。

色々とお話をうかがい、それぞれの絨毯の持つ背景やストーリーを知ると更に魅力が増してきます。
ペルシャ絨毯は色や模様がそれぞれ個性的ですが、バリエーションが豊かなので、モダン、ナチュラル、クラシック、とお客様のお好みに合わせて色々なご提案が可能だなと感じました。

お部屋の中で大きな面積を占めるラグは、雰囲気づくりに大きな効果を発揮してくれます。
どれを選んだらよいか迷われたら、是非インテリアのプロにご相談ください。
他のインテリアアイテムとの相性を見ながら、お客様のイメージに合ったものをお選びいたします。

シンガポールには他にも素晴らしいラグが沢山あります。
先日見に行ったインドの絨毯もデザイン、色ともにオリジナリティがありとても素敵でしたので、また違う機会にご紹介したいと思います。

それではみなさま、enjoy your happy home!

2024/10/21 09:10